流星ワルツ



待ち合わせ時間 8時10分
ただ今の時刻  8時5分




「あら」



鞄の中で明滅しながら、震える携帯を取り出してボタンを操作し、今来たばかりのメールを確認した。




「…やっぱり」


案の定、とため息を吐き苦笑する。


「心(こころ)様、肩に花びらが」



少女は、腰まである長い黒髪と同じ漆黒の瞳を縁取る睫毛を揺らして、肩に視線をむけた。




「立派に咲いたわね」


柔らかく、甘い香りを漂わせている頭上の鮮やかな薄い桃色で染まった景色を目に映した。




「お部屋にお飾りになりますか?」


「こんな美しいんだもの。折ってしまったら、勿体ないわ」



少女は幹に手を当てて、息吹を感じとるかのように身を預ける。
その姿は、女性である手伝いの者が見ても息を呑むほど儚げで美しかった。




「心。まだ行ってなかったのかい?」


「おばあ様。紫苑が遅れるみたいだから余裕ができたんです」



紫苑、という名を聞いておばあ様と呼ばれたその初老の着物を着た女性は目を細め、微笑を浮かべた。




「だから、おばあ様?お稽古宜しいでしょうか」




――渡瀬 心 15歳
茶道渡瀬流の家元の孫娘。
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