流星ワルツ



「千春が走り回って、頭を下げて、頼み込んだんだ。僕でも、母さんでもない。千春がだ」

「…っ!?」


あたしもお婆様も知らなかった事実に叔母様は目を見開いて、何も口を開けなくなっていた。


「自分のミスを反省せず、人に当たって、間に合ったのが普通みたいな態度を取ったお前は、千春みたいに店に頭を下げることが出来るのか。しかも千春は上手く言っても自分からは言い出さず、僕が尋ねたらやっと教えてくれたんだ。その時、千春が何を言ったか分かるか?」

「……」

「『大事な渡瀬家の茶会ですし、何より美代子さんがずっと前から頑張ってきたものだもの。私は美代子さんみたいにお茶を点てられないから、せめて走り回るぐらいしなきゃね』」


叔母様は視線を母様に移し、震えていた。母様は唯深くお辞儀をしただけだった。




その後は、お婆様に部屋に戻りなさいと言われて何があったか分からないけれど、叔母様はどうやら母様に謝ったらしく、さっき見掛けた母様が少し嬉しそうに叔母様に話し掛けて、叔母様がぶっきらぼうに返事をしてるのを見た。



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