流星ワルツ
<流衣>
静かな空間を切り裂くように鳴り響いた着信音に答えるために、ボタンを押した。
「どうだった?」
『流衣、本当にありがとう。ちゃんと言いたいこと言えたわ』
「やったじゃん」
電話で良かった。
こんな顔、心に見せられない。
「なんて…言ったんだ?」
聞きたくないくせに、今の俺は心の大事な幼馴染みの流衣として話しているんだ。聞いてあげなくちゃ、いけないんだ。
たとえ、それが。
『結婚は…あたしが心の底から好きな人としたいです、って』
胸を引き裂くような言葉だとしても。
「ひゅうっ、やったな、心!」
『からかわないでよ、流衣』
膨れたような心が思い浮かび、瞳を手で覆う。こんな自分勝手なものは、全部、隠さなきゃ。
俺の幸せを追ったら、心は泣かなきゃいけない。辛い想いをしなきゃいけない。
心の幸せを追ったら、俺の幸せは夢のままとなる。だけど心は笑える。幸せになれる。
二兎追うもの一兎も得ず、なんて言うけど。俺は。
「…叶うと、いいな」
『そうね、まだまだ先のことだけど』
全力で心の幸せを願うよ。