呪 い サ イ ト
「ん……ちょっとね」


私は言葉を濁す。
が美しくなかったからなんて口が裂けても言えない。


「早く目が覚めちゃって眠いの」


それは事実だ。ただ、元気がない理由には
ならないだけである。

嘘で「弟がうるさくて」と付け加えようとした。
だが、倒置法にして強調しようと
したのが間違いだった。先に言っておけば、
次の言葉を聞くこともなかったかもしれない。


「血の跡が気になって早く目が覚めたの?」


背筋がゾッとした。
衝撃で一瞬、目を大きく見開いてしまう。
優里の息も既に整っていて、
その場が静寂に包まれる。
聞こえるのは、異様に大きい
私の心臓が鼓動を打つ音だけ。

私はただ、茫然とその場に立ち尽くしていた。
指先を動かすこともできない。
全く力が入らなかった。


「それで血を見に行った。でも血の跡は
鮮血のように美しくはなかった。
思っていたものとは全然違っていたから、
今みたいにテンションが下がった。違う?」


その時の私をまるで今見ているかのように、
淡々と状況を説明する優里の目は、
私を捕えて離してくれない。
蛇に睨まれた蛙とはこういうことだと実感した。

―――どうして、知っているの……!?
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