山田丸★ころがり系
素早く富士太郎の後ろに回り込み、力ずくで仰向けにして地面に転がす。
その瞬間。
鼻に鋭い痛みを感じる。
富士太郎が僕の鼻を噛んだのだ。
ひるんだ隙に、富士太郎は腕の下から抜け出した。
僕は必死で後を追った。
富士太郎が逃げてしまったら大変だ。
めるの悲しむ顔は見たくない。
富士太郎は窓の隙間から、家の中に飛び込んだ。
その時、僕は富士太郎を捕まえるということに夢中になりすぎて、我を忘れていた。
僕は迷わず窓を開けて家の中に入った。
階段を駆け上がる富士太郎を追って、僕も二階に上がった。
二階の廊下で僕は富士太郎を捕まえることに成功した。
富士太郎を抱えて、ふと冷静になる。
何で僕は富士太郎を捕まえたんだっけ……
めるの家の中で富士太郎を捕まえる意味は全く無い。
家の中に富士太郎が逃げ込んだのなら、外から窓を閉めてあげれば良かっただけだ。