山田丸★ころがり系
ドアを開けなくて良かった。

不法侵入の変態野郎だと思われて嫌われてしまったら大変だった。

僕は素早く身を翻して階下に下りた。

しかし、残念なことに、階段の最後の段を踏み外してしまった。

体勢を立て直そうと手を突いたところはスリッパ立てだった。

バランスを崩したスリッパ立ては鈍い音を立てて床に倒れた。

そして僕はその上にダイブした。


体に柔らかい脂肪を纏っていて良かったと思える瞬間だった。

ぽよっと僕の体は跳ねた。

僕は素早く身を起こし、リビングの窓から外に出た。

手には自然にピンク色のスリッパが二つはまっていた。



めるの家のスリッパ。

ラベンダーのような香がした。

道路に、シバケンの姿はもう無かった。

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