山田丸★ころがり系
「失礼。さっきまで事務作業をしていて、画びょうを椅子に置き忘れてしまった」

先生が言う。


「大丈夫ですよ」

僕は椅子の上に乗った15個の画びょうを回収しながら言った。

誰にでも間違いはあるものだ。


気を取り直して椅子に座る。


部屋に入って初めて先生の姿を見た。


「え……」

思わず声をあげてしまった。


今日の先生は、変な被り物をしていた。

被り物というか、かぼちゃだ。

大きなかぼちゃを被っている。


「ああ。これか。最近被るようにしたんだ」

先生は言った。


「そんな……なんで!?」

「前の仮面に飽きたからだ。前のは完全に、オペラ座の怪人意識だったからな。キザっぽかっただろ」


「でも、前のほうが格好良かったですよう」


「いや、私は結構、これ、良いと思うんだがね」


「そうですか……」


「今年は、もう、これで行こうと思う」

きっぱりと先生は言った。


「暑くないんですか?」


「私を誰だと思っているをだ?汗などかかん」


さすが先生だ。

妙に説得力がある。

ころがり会を導くのにふさわしい御方だ。


でも、やっぱり、かぼちゃはちょっと変だと思った。

そんなものを被ったら、頭でっかちに見える。
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