神々と世界の狭間で
「行かせねぇ。」

俺は腕の中のレラに向かって呟いた。

「クローンでもなんでも関係ねぇ。お前らに神様がいねぇって言うんなら、俺だってそんなもん捨ててやる。」

少し涙ぐんだ声が震え、瞳から流れ落ちた雫がレラの肩に落ちる。

「俺には神様なんかいらない。お前がいてくれればいい。だから死ぬな。」

そう言って俺はキツく、キツく、レラを抱きしめた。

「綾、ありがとうね。」

レラは俺の腕の中で小さく呟いた。

「でもね。綾にはわからないよ。最後に頼るものの無い怖さが。」

「それにクローンにだけ神様がいなかったら不公平じゃない。」

レラはそう言って困った様に笑った。

トン、レラは俺の腕の中からスルリと抜けると、淵の逆へと押した。

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