神々と世界の狭間で
心の中にモヤモヤとしたものが広がる。

一瞬にして頭の中が真っ白になる。

頭の中では何も考えていない。しかし、体は反射的に綾に背を向け、今上ってきたばかりの階段を駆け降りていた。

あの娘は誰?

頭に浮かぶのは屋上に寝転んだ綾の姿だけ。

静かに流れる風に揺れる髪。

真上から降り注ぐ太陽を全身に浴び、コンクリートに反射した光に包まれている姿。

その中には綾しかしない。

その空間には屋上に寝転んだ綾と、綾を見つめるレラの二人だけしかいない。

二人しかいないはずだった。

…綾とはただの幼なじみ。綾が誰といようと関係無いじゃない。

昇降口まで降りて、携帯を取り出し綾の番号をコールする。

いつもと変わらないように平常心を保って、用件だけを伝える。

レラは少し胸が苦しかった。

その原因があの光景なのか、自分の心に嘘をついたからなのか分からない。
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