神々と世界の狭間で
愛君はモニターの一部を拡大した。

拡大されたモニターに映る胎児のヘソの辺りからは細い管が取り付けられている。

「この子を殺そうとするなら、こんなものは着けません。この管を通して酸素や栄養をこの子に送っています。」

「この子は私が見つけた時にはもう一個の生命体として生きていました。」


愛君は静かに、少しずつ呟くように話していた。

ゆっくりと顔を上げ、不安げな瞳で確りと私を見つめた愛君は、少し震える声で言った。

「所長、この子は人間ですか?」

愛君の真っ直ぐな視線が辛くて私は目を背けた。

生命体という観点ではこの子は人間だろう。愛君の遺伝子そのままでこの子が構成されているとすれば、そのことは間違いない。

…しかし。
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