神々と世界の狭間で
「しかし…、レイラという存在は今、存在しない。」

先生の言葉が口の動きから遅れて俺の耳に届けられる。

…は?

「今、ここにいるのはレイラではない。愛君と思った方がいいだろう。」

先生は一言発する度に辛そうな顔をする。

先生の言っていることの意味はまだ、よく分からなかったけど、今まで育ててきた娘がいきなり別人になってしまったのだ。

そういう悲しみが伝わってきた。

「先生、レラが存在しないって、どういう?」

その時、不意にドアがノックされた。

「所長、たびたびすみません。光本です。」

…光本…レラか?

先生は一瞬で顔を作り直し手で立ち上がりそうになる俺を制した。

「愛君か、どうしたんだい?」

先生の声は落ちつきと威厳に満ちている。
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