神々と世界の狭間で
先生は目だけで僅かに頷いた。

「お願いできるかな?」

レラの視線を俺からはずさせるように先生は立ち上がり、レラの前に歩みよった。

少し、沈黙が流れる。

俺の位置からは見えないが、レラは悩んでいるようだ。

「…わかりました。部屋を整理したいので、少し待っていただければ。」

「いや、急ですまないね。」

「では、10分ほどしてからいらしてください。」

レラはそう言うと部屋を出ていった。

フゥ、先生は息を吐き出すと再び椅子に腰を下ろした。

「これで少しわかってもらえたかな。
今のは間違いなくレイラだよ。
…正しくは私たちがレイラと呼んでいた愛君のクローンだ。」

「先生っ…。」

俺は思わず身を乗り出した。ガタンと机が揺れる。

「私も科学者の端くれだ。今の事実を伝えるには、私にはその言葉しか思いつかない。」

…先生の言いたいことはわかる。

今の会話だけで十分に理解できた。

レラは…愛羅の記憶の中を生きている。

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