神々と世界の狭間で
「見ちゃ駄目ぇっ。」

背中に衝撃が走り、俺は前のめりに倒された。

「痛って。」

背中にはアイラが乗っかっている。

背中からは微かに泣いている様な息づかいが聞こえるが、今はかまっていられない。

俺はゆっくりとモニターへ向けて顔を上げた。

白い壁にはめ込まれたモニター。

そこに映っていたのは、透明な液体、それと点滴の針の様なものだけだった。

「…これは?」

俺は背中のアイラに向けて声を発した。

「見た通りよ…。」

アイラの顔はまだ俺の背中に押し付けられている。

…見た通りって見ても分かんねぇよ。

誠の目で見ることができるのは、さっきと同じ液体と針だけだ。

「見た通り、そこにいるのは胎児よ。」

アイラはそう言って顔を上げ、俺の上から退いた。

「お願い、このこと所長には言わないで…。」
< 75 / 121 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop