神々と世界の狭間で
カナカナカナカナ。

もうそろそろ秋だというのに蝉は真夏と変わらない声を張り上げ、夕日に赤く縁取られた私を見送る。

足を一歩一歩進める度に額からはジンワリと汗が滲み出ている。

道路を囲む様に生い茂る森はまるでアーチみたいで、夕日に照らされた葉はほんのりと赤く色づいたように見える。

見える景色はもう秋の様相だ。

その中で額に汗を浮かべて歩いている私は季節から取り残されたしまったように思える。

「暑いなぁ。」

私はポツリと呟くけど、応える人はいない。

家を出たのは大体2時間前くらいだろうか。

住宅街を抜け、森の中の道に入ってからもう幾分かたつ。

家を出たこと自体には深い意味はなかった。ただちょっと一人になりたかっただけ。

と言えば嘘になる。家に入った一本の電話がきっかけだった。

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