もう1人のボク
「早く!」

僕は彼の手を掴み、立たせた。

「ここにいたら、危険だって!」

もう大声で怒鳴っていた。

「分かった。出よう」

さすがに事態を悟ったのか、彼は僕の手を握り返し、真面目な表情になった。

出口へ駆け込む客達。

しかしウエイトレスはそこを狙って、次々と包丁を振り上げる。

僕は店の奥を見つめた。

「…こっち!」

彼の手を引き、出口とは反対方向のトイレの所に走った。

「どこ行くの?」

「こっちに非常口があったんだ。そこから逃げよう!」

トイレの更に奥に、非常用の扉があったことを思い出した。
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