もう1人のボク
月夜の眼が、険しくなった。

「そうだよ! 陽日なんて控え目なフリをしているけど、ただの臆病者じゃないか! キミこそ、主人格として生きるべきだ!」

殺気立つ月夜の雰囲気に、遊間は気付かない。

「てめぇ…! 言っちゃならねぇことを、言いやがったな?」

「えっ?」

後一歩という所で、遊間はようやく空気の温度差に気付いた。

そして気付いた時には、首を捕まれ、地面に叩き付けられた。

「ぐはっ! なっ何故…?」

「バカ言ってんじゃねーよ。オレにとっちゃ、アイツが全てなんだ」

月夜は陽日を乗っ取る為に生まれた存在ではない。

守る為だけに、生まれてきたのだ。

それを否定されることが、月夜は何よりもキライだった。
< 47 / 55 >

この作品をシェア

pagetop