St. Valentine's Dayの奇跡


「じゃ、いっこっか」

と、歩き出そうとしてところで声をかけられた。


「ねぇ、そこの可愛い彼女、お茶でも飲まない?」

まぁ、そのベタな台詞と胡散臭い声の調子に寒気がしたが、

「や、止めてよ!」

という、舞の声に振り返る。


茶髪に、耳にピアスをジャラジャラ付けた遊び人風の男が、舞の腕を掴んでいる。


「ちょっと、無茶すんなよ」


あたしは、一歩男に近づくと、タメの視線の高さでそいつを睨みつけた。


「あたし達、用があんの。その手、離して」

「てめぇには用はねぇよ。デカ女はお断り」


ヘラヘラした顔で、視線を避けられた。
< 14 / 67 >

この作品をシェア

pagetop