St. Valentine's Dayの奇跡
「じゃ、いっこっか」
と、歩き出そうとしてところで声をかけられた。
「ねぇ、そこの可愛い彼女、お茶でも飲まない?」
まぁ、そのベタな台詞と胡散臭い声の調子に寒気がしたが、
「や、止めてよ!」
という、舞の声に振り返る。
茶髪に、耳にピアスをジャラジャラ付けた遊び人風の男が、舞の腕を掴んでいる。
「ちょっと、無茶すんなよ」
あたしは、一歩男に近づくと、タメの視線の高さでそいつを睨みつけた。
「あたし達、用があんの。その手、離して」
「てめぇには用はねぇよ。デカ女はお断り」
ヘラヘラした顔で、視線を避けられた。