St. Valentine's Dayの奇跡



むかぁ~

このナギサ様を舐めんなよ!



伊達にバスケで鍛えてませんから。

あたしは思わず、そいつの腕を掴みねじ上げる。


「イテテテ、何すんだよ、デカ女、馬鹿力出すんじゃねぇよ」


悲鳴に近い叫び声を上げて、そいつはようやく舞から手を離した。


その時、

「オイ、ナギサ、お前何やってんだ?」

振り返ると、そこに忍が立っていた。


城南の制服にスポーツバックを肩からかけた忍が、呆れた顔であたしを覗き込んでいた。


「なんだ、お前の連れかよ、このデカ女。

ちゃんと鎖につないどけ!」

そいつは、そう言い放つと、あたしの腕を振る切るように人混みへと吸い込まれていく。


「ナギサはあたしを庇ってくれたんだよ」

舞が泣きそうな声で忍に説明する。


「なんだ、絡まれてたのは飯島か」

あっさり、納得する忍が憎らしい。


ちょっとは心配くらいして欲しい。

あたしだって女なんだぞ。
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