St. Valentine's Dayの奇跡
あたしは、なんとはなしに、その扉に手をかけた。
『キィ……』っと古びた音をたてて扉が開く。
(あっ、あ、開いちゃった……)
あたしは恐る恐る中を覗き込んだ。
そこには、記憶の中の教会と同じ光景が広がっていた。
クリスマスの飾りこそないけど、きちんと並べられた木のベンチ、その奥にある十字架と祭壇、そして左右の壁からは、赤や青や黄色、色取り取りの綺麗な光が差し込んでいる。
(ステンドグラスだ……)
子供の時は、キラキラと光るその教会の美しさが、何でなのかよく分からなかった。
普通の家の二階程度の小さな教会だけど、中は吹き抜けで天井は屋根の形に傾斜していて、そこへ足を踏み入れただけで、気持ちがピンと張り詰めた。
そうだった。
これで緊張しちゃったんだよね、あたしたち。
あのクリスマスの日のことが思い出された。