St. Valentine's Dayの奇跡
あのクリスマスの日、このステンドグラスのサンタの絵に気が付いていたら、あたし達の緊張も解きほぐされていたかもしれないな……
そんなことをぼんやり考えながら、静かな教会の中で、あたしは心の平安を取り戻していった。
何も逃げ出さなくたって良かったんだよ……
目に溜まった涙をぬぐった。
シノブがあたしのこと、只のダチとしか思ってないなんて、百も承知のことだった。
それでも好きって、好きでいようって決めたのはあたしなんだ。
笑って、『貰えるだけ、有難いと思え!』くらい言ってやれば良かった。
我ながら情けない。
「セントバレンタイン、あなたのそのハートを私に分けてはもらえませんか?」
あたしは、ステンドグラスを見上げ、思わず呟いていた。
あのハートがあれば、奇跡を起こせるかもしれない……
往生際が悪いけど、なんだか、そんな気がしたんだ。