St. Valentine's Dayの奇跡
「そろそろいい感じに溶けたんじゃない?」
ボールの中でトロリと溶けたチョコを確認すると、舞の瞳が輝いた。
「そうだね、ホラ、ナギサ、例のもの」
あたしは、エプロンのポケットから、例の小瓶を取り出した。
「一滴ずつだよ」
あたしはそう呟きながら、小瓶を慎重に傾けた。
『ポトッ』
そしてまた、
『ポトッ』
温められたチョコの上で、
ブランデーの芳香が匂い立つ。
(願いが叶いますように……)
あたしは、心の中で祈りを唱えた。