St. Valentine's Dayの奇跡
「ほら、ナギサ、あの小瓶のことも……」
隣りで舞が、また、あたしを小さくつついた。
「その時、神父様は、バレンタインのチョコに混ぜると奇跡が起こると、この小瓶に入ったお酒を下さったんです」
あたしは、コートのポケットから小さな小瓶を取り出した。
その小瓶は、ぱっと見普通の瓶のように見えるけど、その側面には綺麗な飾り文字でVの字が刻まれていて、手作りのような味わいがある。
蓋もちょっと変わっていて、赤い石を上手く削って、丁度ピッタリ瓶の口にはまるよう加工してある。
ホラ、アレ、理科実験室にある薬瓶みたいな感じ。
そして、その赤い石の手に触れる位置が、なんとなく二つに割れて、ハートの形に見えなくもない。