St. Valentine's Dayの奇跡



「う~ん、これは……」



そのガラス瓶をじっと見つめながら、城田神父の顔が厳しい表情へと変わっていった。


あたしと舞が顔を見合わせて、どうしていいものかとまごついていると……


「お二人とも、ちょっとこちらに来て頂けませんか?」


厳しい面持ちのまま、城田神父はあたし達を促すように、チャペルの脇の小部屋へ入っていった。

あたしと舞は、黙ってその後に続いた。


そこは、壁一面の棚に本が収められた図書室のようだった。


城田神父はその棚に、大きな梯子をたてかけ、本棚の一番上、天井付近にある厚くて古そうな一冊の本を抜き取った。


「そう、この本です」


城田神父は小さく頷くと、その本を片手に梯子を降りてきた。

それは、古ぼけてはいるが、皮表紙でできた立派な本で、金の文字で

『聖人図鑑』

と記されていた。
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