嘘愛歌


『……いつもの。』

こ洒落た店でもないのだが、小さい頃から通っている事もあって、マスターが私の叔父だという事を抜きにしても私はここを密かに気に入っている。


食器を取り出す為か、背中を向けながら私の叔父、裕司さんはぼんやりと溢す。


「…最近、…綾子の調子はどうだ?」


『さぁ、会ってないんでわかりません。』


くるりと振り返った裕司さんは少し悲しそうな顔で

「そうか」
と言い、私にブラックコーヒーを入れてくれた。

そのコーヒーを私は胃に流し込む。

冷えた体は瞬時にして暖められた。

元々ここは少し寒い。

『暖房、つけないんですか』


「経費の削減だよ」


『そんなんじゃ客が帰っちゃいますよ』


「どうせ、客なんか来やしないよ」


『…裕司さん、私一応客なんですが。』


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