天国のポスト
立派な石段を数段上り、少し歩くと私の目的地は見えてきた。


久しぶりに『彼』に会えるかと思うと、胸が高鳴っていて、自然と一歩一歩が気後れする。









「武浩ー………」







「……」







「…見て、すっごく綺麗な白百合でしょう?庭で育てたの。立派に育ったから武浩に見せたくて持ってきちゃった」







『そんな、もったいないよ』





「そんなことない。武浩にあげるんだから、もったいなくない」






頭の中にまだ鮮明に残っている武浩の声が私にそう言った。



綺麗にラッピングした花束を、まだ綺麗な石段の上に置く。
ヒヤっとした冷たさが、私の手の熱と夏の暑さを少し和らげてくれる。

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