異常人 T橋和則物語
 セロンは無理に微笑して、首を軽くふった。「なぁ、和則」と話しかけた。
「…ウ……ウォーター…ウォーター…」すると、和則の呟きが始まった。
「お前、何才なんだ?五十才か六十くらいか?」
 セロンがきくと、和則はクレイジーに口をとがらせ、幼児が母親に”○○○○だもん!”というような口調で「四十二才だあ~っ!」といった。
 醜くかった。なんとも不様で、アグリーだった。吐き気がする思いのセロンは、「四十二歳?!嘘だろ……おい」といった。
 和則はまたクレイジーに口をとがらせ、「四十二才だあ~っ!」といった。
「どうやって……この男を救うんだ……?」
 セロンは頭痛がして、どうにかなりそうだった。(どうやって……この男を救うんだ……?)まさに悲惨な男ではあるが、どうやればこいつを救える?
「とにかく…」ミッシェルは服を着ていった。「このホテルを出ましょう」
 とにかく、こんなしけた安ラヴ・ホテルとはおサラバだ。
  ホテルを出ると、また謎の男・緑川が神出鬼没にやってきて、話をした。
「君は……何者なんだ?」セロンは尋ねたが、緑川は微笑むだけで、アドヴァイスをするだけだった。


  そういうことだったのか。和則をどうするかわかったのだ。T橋和則。日本一悲惨な男を探していたセロン・カミュは、和則を連れ去った。和則は精神病院にながく閉じ込められていた男であるが、平凡ではない。異常人だ。その糞ったれ男が、変身するのだ。
 緑川はいった。「この和則を変身させればいいんです。十六歳くらいの美少女に」
 セロンとミッシェルは訳がわからなかった。(十六歳くらいの美少女に変身させる?和則を?この糞ったれ和則を?)
(そんなことして何になるというのか!)
「話し会う必要があります」緑川はきっぱりといった。「まずは昼食でもとりながら、話しましょう」
 セロンはうなずいた。「わかった」
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