《短編》聖なる夜に
『…なぁ、亜紀。』


「何よ?!」


振り返り、睨み付ける。



『…嫉妬?』


「―――ッ!」



悔しくて、堪らなかった。


軽い付き合いなのに、あたし一人馬鹿みたいで。



「…バッカじゃないの?
そんなの、何であたしがしなきゃいけないの?
あたしは、エイジのために言ってあげてんじゃん!」



あたしはきっと、最低なんだと思う。


“エイジのため”なんて、押し付けがましい言い方。


だけど、エイジを責めるしか方法がないんだよ。


責めないと、あたしが泣いてしまう。



『…つーか、何でキレてんの?』


「―――ッ!」



相変わらずの王様で。


自分勝手で振り回して。


あたしが何を言ったって、コイツには届かないんだ。



「関係ないじゃん!」


それだけ言い、その場所から走り去った。


いや多分、“逃げた”って言葉の方が正しい。


だけどエイジは、追いかけては来なかった。


来るはずなんてないんだ。


そんなこと、最初からわかってた。


だってあたし達は、“軽い付き合い”なんだから。


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