《短編》聖なる夜に
トイレの個室に入って、泣いた。


勝手に目から流れてくる液体は留まることを知らず、それを止める術だって、あたしは持ち合わせては居ない。


期待したら、馬鹿を見るんだ。




『―――ねぇ、最近エイジ冷たくない?』


「―――ッ!」


声が聞こえ、驚いて顔を上げた。


聞き耳を立ててみると、メイクでも直しているのだろう女二人の声がする。



『わっかる~!
つーか、あの二年の女、何なの?!』



…あたしのことだろうか?


てゆーかあたしって、こんな場所でも悪口言われてんの?


ホント、最悪すぎる。



『だよね~!
実は付き合ってるとか?』


『え~?!やめてよ、冗談でも!!』



わるかったな!


だけど、あたしが言いだしたんじゃないんだよ。



『でもあたし、クリスマスにエイジ誘ったんだよ?』


『マジ?!』


『マジマジ!!
したら、来てくれるって!!』


「―――ッ!」


テンション高く言う声に、それまで考えていたことが吹っ飛んだ。


ついでに、心臓も止まってしまったのかと思った。


無意識についたため息のついでに、何故か止まった筈の涙がまた溢れてきて。


“何だ、アッチもコッチも上手くやってんじゃん”って。


悔しいやら悲しいやらで、めちゃくちゃだった。


そりゃそうだ。


だってあたし達は、そーゆー関係じゃん。



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