《短編》聖なる夜に
今日も見下ろす窓の外には、いつも通りの光景が広がっていて。


いつも通りそれを眺めるあたしとミチ。


だけどポカンと空いてしまった心の穴の所為で、直視なんて出来なくて。



「…もぉ嫌だ。」


言葉なんて、無意識に出てしまう。


エイジを呼ぶ女の声が、三階のこの場所まで聞こえてくる。


黄色い声も、囲まれるエイジも。


その全てが、もぉ嫌だ。



『…どした?』


横目にあたしを捕らえたミチは、不思議そうに聞いてきた。



「…別れようかな。」


『ハァ?!』


ポツリと言った言葉に、ミチは可愛い顔を歪ませる。


だけどあたしはもぉ、それしか考えられない。



『…とうとう嫌になったんだ、“軽い付き合い”ってやつ。』


「…じゃなくてさ。
エイジが嫌なんだよ。」


『…同じじゃないの?』


「違う。」



と、思うけど。


もぉ、わかんない。


あたしばっか好きで、悔しくて堪らない。


嫌味言われることだって、クリスマスに他の女と過ごす事だって、耐えられないんだ。


本当は、電話に出ない間だって、何やってたのか気になる。


あたしにやってみるたいなことや、それ以上のことをしてるのかもしれない。


そんなの、考えたくないじゃん。


だから、エイジが嫌い。

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