《短編》聖なる夜に
「…もぉ良いじゃん。
軽い付き合いだったわけだし、別れても問題ないでしょ?」


何も言われたくなかったから。


だからあたしは、口から流れ出るままに言葉を続けた。



「…別に、お互い好きじゃなかったじゃん?
それなのに、一緒に居る意味ないってゆーか?」


『亜紀!』


「―――ッ!」


あたしの言葉を遮り、エイジは低く声を上げる。


その瞬間、怖くなって目を瞑った。



『…何言ってんの?』


「―――ッ!」



それはこっちの台詞だよ、エイジ…。


そんな引き止めるようなこと言われたら、決心が鈍っちゃうじゃん。


折角徹夜で練習したのに。


最後は笑ってさよならしようって、決めてたのに。


…そんなこと言われたら、泣いちゃうじゃん…。



「…コレ。」


だけどあたしは、振り払うようにして、握り締めていたストラップをエイジの顔の前に突き出した。



『…何?
つーか、俺があげたやつじゃん。』


みるみるうちに、エイジの顔が怪訝なものに変わっていく。



「…もぉいらないし。
だから、返そうと思って。」


『…受け取らないって言ったら?』


「―――ッ!」



何で…?


何でそんなこと言うの…?


どーせあたしのこと好きじゃないくせに、そんなこと言わないでよ!!


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