《短編》聖なる夜に
「…丁重にお断りします。」


瞬間、エイジは声を上げて笑った。


そしてゆっくりと顔を上げ、再びあたしの瞳を捕らえる。



『…じゃあ、付き合わない?』


「…ハァ?」



“じゃあ”の使い方は、大分間違っていると思う。


そして何故、そーゆー方向に行くのかがわからない。



「…もっとお断りします。
そーゆーことは、他の人とやってください。」


『…やだ。』



“やだ”って…。


子供じゃないんだから…。



「…あのねぇ、先輩―――」


『オッケーしないと、このまま襲うよ?』


「―――ッ!」


あたしの言葉を遮り声を上げたエイジは、あたしの髪を掬い上げ、軽くキスをする。


そんな行動に絶句してしまい、言葉の一つも出なかった。


完璧にあたしは、捕まってしまっている。


視界一面を支配しているのは、憎たらしいくらいに綺麗な顔。


とりあえず、どうやって逃げようか。




『…ハイ、決定。』


「ハァ?!ちょっと待って!!」


目を見開くあたしに、エイジは相変わらず飄々とした態度のまま。


そして、次の瞬間には、恐ろしい言葉を放つ。



『…よく考えたら、どっちみち拒否しても付き合っても襲うじゃん?
じゃあ、付き合っとけば良くない?』


「―――ッ!」



…待って!


襲うことが“決定”ってこと?


< 3 / 34 >

この作品をシェア

pagetop