雨のち晴れ

初めてその男に逢ったのは母と再開した数時間後でした―。

食事を済ませ、母の車でその男の家に向かった。

母が一緒に逃げた
あの男の家へ―。

緊張しながらチャイムを押した。
<ピンポーン>
玄関の戸がゆっくりと開いていく―。

「いらっしゃい」

中から体格のいい男が
こちらを見ていた。

初めて見る母の男。

どことなく父に似ている気がした。

目が大きいとこ

笑った時に出来る目の横のシワ

(この人が…)

複雑な気持ちでその男と祖父の話を聞いていた。

次々と出るその言葉は、あたしの予想とは随分違っていた。

母はこの男と籍を入れてなかった。

子供が出来た時にはもう
籍を入れたと思ってた。

あたし達のため?

頭の中で色んな事を考えた。
考えても考えても

答えは見つからなかった。
ただ1つ

分かった事は

この男が父親になる訳じゃないって事。

どこかで
ほっとしている自分がいた。
覚悟はしてた。

それでもあたしの
父親はただ1人とまだ心のどこかで思ってた。

憎んでいるはずのあの人を未だ父親と思ってる自分がいた―。
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