雨のち晴れ
「別れよ」
あたしの言葉を聞いて
「嫌だ」
と一言だけ言って
彼はこちらをじっと見つめていた。

静まり返る部屋―。

「もう生きてたくない」

彼の言葉が昔のあたしを思い出させた。

あたしが死のうとした時
訳も聞かずに彼は必死で止めてくれた。

今度はあたしが守らなきゃいけない。

そう思ったんだ。

「理由は何であれ、あんたは一人ぢゃないよ。あたしが死のうとした時、あんたは必死になって止めてくれた。あの時、一人ぢゃないんだって思えた。ホントに嬉しかったんだよ。だから一緒に生きよう。」

上手く伝えられたか分からない。
それでも彼は涙を流しながら今の気持ちをぶつけてくれた。

閉じ込めてた自分の気持ちを全部はきだしてくれた。
あたしはいつも泣いてた。

理由も聞かずに傍にいてくれた。

でもそれが彼の心の叫びを閉じ込めたんだね。

付き合ってるのに

お互いの事

全然知らなかったんだね。
ごめんね。

気付いてあげれなくて。

ごめんね。

これからはあたしが守るから―。
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