雪姫炎上
控え室に戻った烈は、再び汗臭い着ぐるみを着込んだ。
(せっかくさっぱりしたのに…)
泣きたい気分になるが、一応、プロのスーツアクターのはしくれ。鏡に向かって、きゃるん☆とポーズを決めてから、静と共に玄関に向かった。
正面玄関を出ると、もう数人の市職員が待機していた。
出迎えの為に直立、というよりは、周囲を警戒する警備兵のような雰囲気だった。
「…?」
烈は違和感を感じながら、姫の到着を待った。


ロータリーに入ってきたのは、ハイブリットの公用車。さすがに、車体に市名までは入ってはいないが…
「おい、市長の家族の送迎に公用車使わせてるのか?まずいだろ。」
烈は静に耳打ちした。

「要人警護の予算は、市議会で承認されている。お前は、今、姫だろ?黙っていろ!」

(要人…?)

深く考える間もなく、公用車が玄関前に音もなく停車した。静が駆け寄って、ドアを開ける。出てきたのは、黒髪ストレートを姫カットにした、清楚な女子高生だった。


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