雪姫炎上
雪姫(着ぐるみ)は、静と呼ばれた侍に連れられて、市役所に入って行った。
廃藩置県後も市長として、畠中を治めた藩主が、外堀の内側に立てた市役所。
畠中家当主が代々市長を勤める畠中市においては、当主は今も実質『殿』であった。
市役所の控室に入り、厳重に鍵をかけて、雪姫はようやく休憩となった。
何分、市役所である。市民や観光客の皆様が迷い込まないとも限らない。ゆるキャラに中の人などいないのだ。
施錠を確かめて、静は雪姫の頭部を外してやった。
「ぷっは~!暑かった~臭かった~!もおマジ限界!」
雪姫の中身が、息と同時に悪態をついた。
「やかましい!」
静は、中身の少年をポカリと叩いた。
「ってえ!深見!てめ、パワハラて訴えるぞ!」
少年は静を睨み付けた。


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