新春対談
新年、某日
此処は、都内の某ホテルの一室。

窓からは、富士山が見えている。

新春に相応しいロケーションだ。

朝の十時、上和田編集長が、部屋に案内されてきた。

本日の対談は朝比奈美月への御褒美を兼ねて、何カ所がロケーションを変えながら、行うことになっている。

当然費用は鶴出版が全額を持ち、内容如何では本として出版されるかも知れない。

ま、有り得ないか…。

と、次に栄三と美月夫婦がやって来た。

「わあ、富士山が綺麗。編集長、随分奮発しましたね」

「ハハハ…。作家先生の対談となれば、この様なロケーションじゃなくちゃな。…」

「万里小路 頼光さんはまだですかね」

田辺はソワソワしている。

「先生、まあまあ、慌てなさんな。そろそろ来ますよ」

《コンコン》

ノックと共に、ドアが開かれた。

「遅くなってすいません。ちょっと買い物をしていたものですから」

そう言って、私は後ろ手に隠し持っていた花束を田辺夫妻に差し出した。

「御結婚おめでとうございます」

「きゃ、嬉しい。ありがとうございます」

美月は花を受け取ると、栄三と顔を見合わせ、微笑んでいる。
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