俺は男になりたかった。
「会わせたいのって、俺の両親」


…両親?


なんで?


その心を読み取ったかのように雅が衝撃的な一言を発す。



「僕の母さん、海里と同じ病気なんだよ、性同一性障害」



「……え?」


俺はかなり驚いた。


そんなまさか。


「あ、海里ちゃん。僕こう見えても昔は荒れてたんだよ」


雅の母の、"僕"という表現に隠しきれない『男』が滲み出ている。


「本当に。夢美を振り向かせるのには相当努力したんだよ」


そう、優しそうなお父さんが口を開いた。


どうやら雅の母は『夢美(ユミ)』父は『雅弘(マサヒロ)』というそうだ。


「海里ちゃん。僕は、完全には女にはなれなかった。でも…」


どう見ても夢美は綺麗で、女にしか見えない。


「でも?」
< 12 / 15 >

この作品をシェア

pagetop