俺は男になりたかった。
「…はぁ。せっかく忠告したのに」


そいつはそう言って首を鳴らした。


「あ?なんだてめ……ぅぐっ!」


一瞬の出来事。


ドサッと鈍い音をたてて倒れ込む一つの体。


焦る残りの男達を尻目に彼は淡々と言う。


「ちゃんと言いましたから」


ニコリと微笑む彼の目は笑っていない。


「……べ、別にこんな男女どうだっていいよ!気持ち悪りぃ!」


唾を吐き捨てて、男達は伸びた一人を担いでそそくさと退散した。


「しょぼいなー。あ、大丈夫?」


微笑むその顔は八重歯がでて可愛いかった。


さっきと違うのは、ちゃんと目が笑っていた。
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