俺は男になりたかった。
「大丈夫だけど…ってか余計なお世話だてめぇ」


……見捨てなかった。俺を。


「余計なお世話?ヤられてたかもしれないのに?」


「………うっせぇ!」


自然と顔がニヤけた。


「そんなことよりあなたいつまでそんな服着てるんですか?これ着て下さいよ」


そう言って彼は俺に着ていたダウンを手渡した。


女扱いしやがって。コイツ!


「…んな女みたいなこといいよ!」


口ではそう言っても、サラシで潰した少し膨らんだ胸が俺は女なんだということを痛感させる。


胸が痛かった。


お前は男だよって言って欲しかった。


「…僕はあなたが女だから、とは言ってないよ?」


彼は全てを見透かしたかのようにニヤッと笑った。



なあ、俺の気持ちがこの一言でどんだけ軽くなったか気付いてるか?


……こいつとは合う気がする。


この瞬間、そう思った。
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