小さな約束
「え…え〜と……そ…そうっ!私、未来姉ちゃんの妹なんだけど、最近未来姉ちゃんずっと帰ってこないのっ!両親は海外で仕事だし…。未来姉ちゃん、いつも日陽兄ちゃんの話してたから、日陽兄ちゃんの家に未来姉ちゃん来てたかなぁ…って来たんだけど、扉が開いたままだったから入っちゃった。ごめんなさい。」
咄嗟の嘘だ。
日陽の表情を伺うと、信じていないような顔だった。
終わった。
こんな嘘、優秀な日陽ならすぐに見破っちゃ「そうなんだ。大変だね。さっきまで未来居たんだけど…。なんたら、うちんく泊まってく?そのうち、未来もくるだろうし。親も居ないんだろう。」
…忘れてた。前、日陽がおれおれ詐欺曰わく、『私私詐欺』に騙されて、三十万銀行に振り込んだ事を。
犯人はその後すぐ捕まったけど、詐欺は初めてって言ってたっけ。
日陽の家には、お婆ちゃんが一人暮らしをしている…と勘違いしたみたい。
狙われたお婆ちゃんは、日陽の家ではなくて、隣のでっかい家に住んでいる。
詐欺の内容も、とても疑わしい、信じれない内容だったのに、こいつはあっさり騙されたんだった。
『大変だねぇ』と呟く日陽を、私は唖然と見つめていた。
「じゃあ、泊まらしてください。よろしくお願いします。」
私は深々と頭を下げた。