あたらしい世界
「部長、編成一緒でしたね。よろしくおねがいします」


私はジョッキを両手で包みながら言った。


すると部長は濡れた口元をTシャツの袖で拭い、“ん?”と私に耳を近づけてきた。


ぶ、部長が近い――。それよりも、部長がシャツの袖で口、拭った時、胸とおへそ、見えちゃったよ。


キャッ。


それにしても細いなー。


お腹、真っ白で薄っぺら。

「あ、あの、えと、バンドフェス同じ編成なので、よろしくおねがいします」


「ああ」


部長はそう言ってえだまめを口にし、また私に向き直って言った。


「楽しもうね」


「――はい」


私は部長と一緒に演奏ができるだけで楽しいですっ。

「聖二も確か一緒だったよね?」


好きならしく、部長はさっきからえだまめばかり、はむはむとついばんでいる。

「そうですね。よろしくっす」


と、私の目の前にいる聖二はからあげを口に入れながら言った。


先輩はジョッキをもう空にしている。


瓶ビールを持ち、聖二は彼女にビールを注いだ。


「なんで2年連続、もえぎと一緒の編成なんすか」


“ありがとう”と音々先輩は言い、またビールをごくごくと飲み、幸せそうに息を吐いて言った。


「仲いいじゃん。聖二ともえぎちゃん」


「まあ、悪くはないっすけど」


聖二は私を見、私はうなずいた。


うん、悪くはない。


「息合ってるわよ。繊細な聖二の音ともえぎちゃんなおおらかな音色。真逆のような性質なのに、妙にマッチするのよね。私生活でも仲がいいからかしらね」


横で部長がまだ、えだまめを食べながら、うんうんとうなずいた。


「繊細なのは、私の方じゃないんですか」


と、私は苦笑して言った。

いやいやいや、と、部長と音々先輩はそろって首を横に振る。
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