あたらしい世界
「鈍感なところもありますよ、もえぎ先輩」


と、私の右隣に座っていたフルート1年生の若宮くんが言ってきた。


「鈍感? どんなところが?」


「……」


若宮くんは何も言わず、まだビールの残っている私のジョッキにビール瓶を傾けた。


「ああ、ありがとう」


幼顔に含み笑いをたたえている。


――わっかんないんだよな、若宮くんて。


隙がないというか、肝がすわっているというか。


若宮くんの前だと私、まるで年下になっちゃう感じ。

そんな若宮くんは、聖二を追ってこの大学に入り、このサークルに来たそうだ。

なぜに聖二?


私はそれが不思議でならない。


アホ聖二。


まあ、確かにフルートの腕はそこそこのものだけれども。


追っかけてまでこの大学くるかぁ。


私はそんなことを考えながらビールをゴクゴクと胃へ流し込んだ。


やがて、みんなはアルコールに侵食されていき……。

私たちのテーブルに上半身裸の睦緒が乱入してきた。

聖二と若宮くんが犠牲になり、3人でプロレスごっこを始めた。


莉胡と音々先輩は別のテーブルへ行き、1年生の女の子たちと盛り上がっている。


こっちへおいでよ、と莉胡に誘われたけれど、私はここでゆっくり飲むわと言った。


このテーブルには部長と私のふたりきりになった。


部長は少し酔っているらしく、えだまめの殻をまだ弄んでいた。


私は、その隣でゆっくりとビールを飲みつつ、東雲部長の横顔をチラ見していた。


細い肩、白い肌。
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