あたらしい世界
部長が出て行ったのは、たぶん午後2時からの練習に間に合うように出かけたと思うから、きっとその前後の時間。


その頃から私は眠りこけていたんだと思う。


部長が帰宅した音で、目が覚めた。


リビングと廊下をつなぐドアが開き、閉まり、部屋の電気がついたところで私の意識ははっと戻った。


私はガバッと上半身を起こした。


そして、ロフトから下を見下ろした。


すると部長は私に気づいて、


「ああ、眠ってていいよ」

と、笑った。


「すみません! 私、帰るつもりだったのに」


「ああ、いいって。……なんなら、今夜の酒にもつきあってもらっちゃおうかな」


私はタオルケットをたたみ、いそいそと木の梯子を降りた。


「ああ、じゃあ、私。おわびに何かご飯つくりますよ。おつまみでも」


「ああ、それはありがたいな。最近野菜とか食べてなかったからさ。えだまめだけかな。食べたのといえば」


「栄養失調で倒れますよ」

私は部長に向き直って言った。


部長はまた、私のあたまをぽんぽん、と叩いて“そうだな”と言った。


背の高い東雲部長。175cmはある。160cmの私の身長だとあたまがいい位置で叩きやすいんだろう。


嫌な気はしない。むしろ……嬉しい。


ほんわかとした気分になる。


「あとで、シャワーお借りしてもいいですか?」


「ああ。それから、買い物行くか。スーパーが近くにある」


「はい」
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