あたらしい世界
「あ、あれ?」


「おはようございます」


部長は、昨日の私のようにカーペットに直に眠っていた。


目が覚めて、一瞬、訳が解らなかったのだろう。


ご飯をつくって、丁度部屋に戻ったところで、部長は目覚めた。


「ああ、そっか。俺、昨日……」


「覚えてるんですか?」


「うん。記憶は、ある方」

そう言って、両手両足を伸ばして、大きく息を吐くと、勢いをつけて部長は起き上がった。


「なんか、迷惑かけたね」

「いえいえ。鬱憤が溜まってるんでしょう。発散しないと壊れますよ」


「――なんか、いい匂い」

部長は、キッチンの方を見遣って言った。


「さっき、買い物行ってきたんです。炊飯器もお借りしました」


「なんか、久しぶりな匂いだ」


「お味噌汁だけでもどうです? しじみです。お酒飲んだあとにはてきめんですよ」


「うん。ありがとう。いただくよ」


これが、私たちの朝――。
< 33 / 73 >

この作品をシェア

pagetop