あたらしい世界
私たちはまず、輪のようになって備品の譜面台を組み立て初める。


「もえぎちゃん、これ、合奏の曲ね」


と、クラのパートリーダーである小柄な秀樹先輩が譜面を渡してくれた。


「4曲分。確認してね」


秀樹先輩は、私と同じくらいの身長で、目線も同じくらいだ。


なんだか、安心する。


私は温厚な秀樹先輩が大好きだ。


「はい」


「具合大丈夫? 昨日、頭痛で休んだって」


ああ、東雲部長、そういうことにしてくれたのか。


「案外、二日酔いなんじゃないの?」


と、睦緒の鋭いツッコミ。

――ギクッ。


「そう言えば、今日もえぎ先輩と部長、一緒にきてましたね」


クラの1年、黒縁メガネの大柄、段原くんが更に私を攻撃する。


クラパートと合同で譜面台を組み立てていたフルートパートの聖二の視線をふと感じた。


聖二にも聞こえていたようだ。


何、もえぎ、部長とつきあってるの? 朝帰り?」


と、目を見開いて言ったのは睦緒。


「何? 何?」


興味津々の顔で周りの先輩方が、ずい、と寄ってくる。


「い、いえ。たまたま、来る時に一緒になっただけです……」


私は真顔で答えた。


だけれども、内心ヒヤヒヤしていた。


おとといの夜――私と部長が飲み会の後にふたりして消えて行ったのを知っているのは聖二だけ。


もしかしたら、実は今日まで部長の家にいたということを感づいているのかもしれない。


いや、別に聖二に何を知られてもいいんだけれども。
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