あたらしい世界
「あーじゃあイタリアンか」


「サイゼリヤ?」


「あははは……バカ」


3人ははしゃいでいる。


よほどお酒が楽しみと見える。


ブルルル……ブルルル……。


私のカバンの中の携帯が揺れているのを感じた。


慌ててカバンからそれをとりだす。


『メール着信 東雲優人』と表示されていた。


部長?


私は二つ折りの携帯を開いた。


『今日も家に来ないかい?』


まだ音楽室にいるだろう部長からのお誘いメールだった。


私は、前を歩く聖二たちを見た。


「せい……」


聖二を呼ぼうとした。けれども。


この前の飲み会でも、部長のことで2次会の誘いを断っちゃったな、となぜかやましい気持ちになり、


「莉胡」


と、彼女の名前を呼んだ。

「なーにー?」


莉胡は私の声に立ち止まった。


睦緒と聖二は話をしながら私の声には気づかずに歩いていった。


「ごめん。用事できた。3人で楽しんできて」


私が片手を挙げて“ごめん”と言うと、莉胡は頷いて、そして、ニヤリと笑った。
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