あたらしい世界
「もえぎ。今日こそメシ、行こうよ」


「メシ?」


ご飯ならきっと、部長と一緒に食べる……。


「あ、メシじゃなくてもいいんだ。どっか行かない?」


聖二はそう言い直した。


私はまた、部長の姿を見た。


オレンジ色の透明なプラスチックのケースに指揮棒をしまっていた。


私の視線には、気づかない。


そうなんだ。


私、前々からずっと、ことある度に、半ば無意識に部長のことを見つめていたけれど。


部長と目があったことは、そうそうない。


部長は……私のことなど、何とも思ってないんだろうな。


酔った時の、絡む相手、その程度でしかないんだろうな。


「もえぎ?」


「ああ、うん。いいよ。たまにはふたりで歩こうか」

そう言うと、聖二はぱあっと笑顔になり、


「うん!」


と、大きく頷いた。


そして、いそいそと自分の席に戻り、テキパキとフルートを片付け始めた。
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