あたらしい世界
私と聖二は、並んで大学近くの小さな公園のベンチに座っていた。


聖二はコーラ、私はポカリのペットボトルを手にしながら。


夕刻とは言えども、今は夏だ。まだまだ空は明るい。

公園では、子どもたちがキャーキャーとはしゃぎながらボールを追いかけていた。


無邪気だな。 


私にもあったんだろうな。こういう時代。


誰にでもあったんだよね、幼少時代。


毎日、何でも楽しくて、あたらしい発見ばかりで。


友達とケンカしても、次の日には仲直りして。


眠る前には、次の日が来るのが待ち遠しくて、わくわくして。


それでも眠気はやってきて。


あたらしい朝に、希望を抱くんだ。


不安なんてない。


難しいことなんてない。


あの頃――。


「夏だなぁ」


私が、突拍子もなく呟いた。


「俺、夏、大好き」


聖二がその言葉を受けて答えた。


聖二はコーラに口をつけ、口いっぱいにコーラを含み、一気にごっくんと飲み干した。


そして――。


「俺、もえぎのこと、好き」


と、サラリと言った。
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