あたらしい世界
深夜の病院。


暗いロビーで長椅子に座り、うなだれていた部長に声をかけた。


「……治療、終わりました」


私は松葉杖をついていた。

手術した右足に負担がかからないようにだ。


「……何針?」


「3針で済みましたよ」


そう言うと、部長は、はーっと大きなため息をついた。


「また、俺のせいだ」


「いえ、部長に近寄った私が悪いんです」


「よせ」


部長は強く言った。


「……もう、俺、酒やめるわ」
< 61 / 73 >

この作品をシェア

pagetop