あたらしい世界
“クロス☆音々”のメンバーが部室に一同に介している。


男子8名、女子6名の面々だ。


冴江先輩、少し太った?


若宮くん、相変わらず、どうみてもまだ高校生か中学生だ。


森町兄弟――秀樹先輩に恒樹。学年は違うのにやっぱり双子に見える。


そして――。


部長である東雲優人先輩。

背がひょろっと高くて、触れるだけで折れてしまいそうな細い腕。


口元にたたえてある小さなホクロがセクシー。


……また少し、やせたような気がする。


部長は、副部長の焙音々先輩と、会計の秀樹先輩に挟まれて、窓際に置かれた長机についている。


その他の部員は、立ったまま話を聞く。


私は莉胡と聖二の間に立っていた。


「えー。まずは、テストご苦労さまでした」


部長が艶のあるアルトの声で口を開いた。


ご苦労さまでしたー、と皆は言い、会釈をした。


「えー、連絡が一件。9月に開かれるバンドフェスティバルに今年も参加が決定いたしました」


わぁー、と部員たちは皆歓声をあげ、拍手。


バンドフェスティバルとは、駅を中心に市内各地のオープンスペースでの演奏会のお祭り。


ジャズ、ゴスペル、バンド、ピアノなどの演奏家たちがパフォーマンスをする日だ。


祭典は、大勢の観客が集う。足を止めて音楽に聞き入る通行人もいたりして。


音楽で溢れる2日間だ。


出場希望者も殺到するのだ。


審査として、デモテープを事務局に送るんだ。


それが通過して、今年もどうやら“クロス☆音々”で出場できるらしい。


「例年通り、2つの編成と、全体合奏と、二箇所でやりますのでよろしく」


「2つの編成メンバーは、私が独断と偏見で選ばせていただきました」


と、部長の隣の音々先輩が凛とした声で言った。
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